荒畑の家 (愛知県名古屋市)
設計監理 向井一規建築設計工房
(協力) 百デザイン
構造設計 伊藤構造計画工房
用途 個人住宅
家族 夫婦
敷地面積 93.35㎡
建築面積 48.82㎡
延べ面積 83.68㎡
構造 木造
規模 地上2階
工期 2013.10~2014.05
施工 前田工務店
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平安時代に発生した町家は、家前面に店を構え軒を連ねる姿から、片側に寄せた‘通り土間’と畳間、奥には庭や蔵を持つ構成へと進化し、大正の時代に下っても、その形式を踏襲していました。特に、都市庶民住宅の地割りは、二間間口で戸境壁を共有する独特な空間に慎ましい暮らしを生み、関西では「しもたや」と呼ぶ借家が多く存在していました。今日でも、その様子や名残が都市部のあちらこちらに見られます。それは、今尚、住まいのかたちの一つとして現代に課せられた大切なテーマのようにも感じます。
この敷地は、間口4m奥行き20m程の地割り形状です。敷地長手に窓をほとんど設けられないために、中庭を配し、その中庭を介して光と風が家全体に注ぐ配慮をとっています。各室を引き戸のみで仕切り、開放すれば玄関から奥まで一連なりとなって、光と風と、視線を隅々に広げます。家の外周を黒色で纏うのに対し、中庭に面した外壁や内部の壁を白色でコントラストさせ、その連なりをワンルームのようにいっそう感じられるものとしています。また、和室の床やダイニングキッチンの天井、窓の高さに変化を持たせて、この地割りから建ち上がった新しい住まいに、新たに奥行き感と心地良さを随所につくっています。