1962年、共同保育所としてスタートし、現在は、子どものみならず障害者を地域とともに支え、社会福祉を進歩的に実践する池内福祉会3つ目の保育園です。
2011年、2012年の名古屋市は、待機児童数全国ワーストワンを記録していました。名古屋市保育行政や愛保協(愛知保育団体連絡協議会)は、懸命に対策を講じ、その数字も現在ゼロと報告されています。2010年に計画着手し、児童数の多い名古屋市南部に池内福祉会が園舎を新設したのも、そのような状況が背景にありました。
畑で野菜を育て収穫し、それをいただく。子どもたちが野菜を摘み小包丁で刻み、食器を並べ「いただきます」と。それは、大人から見れば危なっかしく不器用な作業ですが微笑ましい様子です。この小さな地産地消というべき食育と、異なる年齢の子どもたちが一つの空間で共に育つ異年齢保育が、計画の基軸となる二つのテーマでした。異年齢保育は、兄弟姉妹の減少も起因する少子化への対応以上に、幼少期から異なる年齢と関わりを持ち、子どもの社会性を育てていく年齢別保育と異なる保育です。年長さんを真似て年少さんが動き、逆に、年少さんを見守る年長さんの優しさなど様々な出来事が生まれます。
月齢児対象の乳児室以外、5歳までの乳幼児を4つのグループに分けた異年齢保育室をつくっています。2グループを東と西の建屋に各々分棟し、事務と調理の管理棟が手を結ぶように大きく配置します。保育室は、子どもの背丈に合った流し台を持ち食育を行う‘食のスペース’と、部屋の拠点で外部テラス、園庭に繋がる‘遊のスペース’、奥には畳敷きと床の間を備えた和室の‘寝のスペース’という‘食・寝・遊’の構成です。敷地が北西方向に下がり、南道路を挟んで向かいに住宅が建ち並ぶため、光と風を積極的に取り入れようと、各建屋は角度を振ります。室内の壁も、それらに沿いながら、子どもたちが光と風の道に乗るように間仕切り、内部空間をつくっています。