知立市の地形は、市を東西に流れる2つの川で堰き止められるように平坦地を成しています。北には逢妻川、南に猿渡川を控え、特に、南下していく地形は、平地から傾斜に形を変えて猿渡川へとぶつかっています。その川向こうには田畑が広がり、川近くの傾斜地には、弘法大師ゆかりの弘法山遍照院と、その寺に隣接する今回計画の猿渡保育園が建っています。
子どもたちの育っていく家並みをつくる。0~1歳児の[はなの家]、2~5歳児の[太陽の家][空の家][森の家][虹の家]、そして調理の[ごはんの家]。0~1歳児は、大きな平面を持つ建屋2階に中庭を据え、それを囲うグループ分けされたスペース。2~5歳児は、異年齢一緒に‘家’という一つのスペースで一日を過ごします。この5つの家々を配膳の拠点となる[ごはんの家]を中心に分棟配置し、デッキで広く繋ぎます。0~1歳は、歩くこともままならないため、フラットな床を主としていますが、2~5歳の家々は、床をスキップさせて、あらゆる所が遊びの場になるよう配慮しています。加えて、敷地の南北が地形の傾斜によって高さを変えているため、このスキップする床と外部の関係が各所で面白いスペースをつくっています。ある場では、床下に隠れ家のようなスペースをつくり、別の場では周辺の緑や眺望を‘家’のリビングのように室内へ取り込みます。
家々の中心にある階段は、異なる床を繋ぎ、光と景色を取り込み、子どもたちが自由に動き回る木立のように場を結び、そして、外部のデッキは家々から伸長した屋外の保育スペースになっています。広々としたデッキ上は、家々の共有する場であり、デッキ下に木漏れ日を注ぎ、敷地全体が林のように子どもたちが駆け巡る小さな環境を敷地内につくっています。